〜 みんなで旅行に行こう! 〜 トラベル3
九州旅行三日目。
この日は、俺達が泊まっている旅館の近くで、町を挙げての大きな祭りがあるらしい。
そういう話を朝食時にオッサンから聞き、行かないかと言ってきた。まあ、俺としては、旅の思い出になるし、渚と汐も行きたそうにしていたので行くことにした。
朝食も食べ終って、自分の着替えをしていると、突然、渚と汐に部屋から追い出された。何事かと思っていると、どうも服を選ぶまで外で待ってて欲しいようだ。
コソっとどんな服かなと覗こうとしたら、「「まだ入ったらダメ(です)!」」と二人に言われてしまった。
ホント、それはないよ……。
って横を見るといつのまにか、オッサンがいた。オッサンが言うには、「かわいい娘と孫の着替えを見て何が悪い!」と言い切ってしまった。
やっぱ、やることが同じだな、俺達。
まあその後は、ニコニコと笑みを浮かべた早苗さんによってオッサンを連れていかれ、こっぴどく怒られていたらしい。
オッサン、あんたもいい年なんだから……、と心の中で思っていた。まあ、俺も大して変わんないがな……。
その三十分後、やっと二人の着ていく服が決まったそうで、俺達は祭りのある会場に向かった。
旅館からタクシーで五分のところにあり、その場所に着く頃には、既に沢山の人がそこに来ている。早苗さん達とはここで別行動となり、昼頃に一度集まるとして集合の場所とかを決めた後、俺達は祭りの中に入っていった。
町を挙げての祭りというだけに、いろんなお店でお菓子やそこだけの限定品とかを売ってる。見るからにどこの店も、俺達みたいな観光客や親子連れとかで繁盛しているみたいだ。
「……しかし、人が多いなぁ。二人とも、あんまり離れるんじゃ……、あれ?」
ふと横に目をやると、さっきまでいた渚と汐の姿が無く、
「朋也くん、こっち来て下さい」
「パパ、早く早く」
先の店で渚と汐が手を振っている。あはは……、いつの間に先に行ったんだろうか。ちょっとビックリするから、あんま心配させるなよ。
まあ、それだけ渚も汐も、祭りを楽しんでいるんだろうな。俺は二人のいるところに走っていった。
「見てください、これを」
ある店の前に立ち寄り、二人が指さす方を見てみる。そこには何やら見たことあるような物があった……。
「……何故、ここにこれがあるんだよ」
そう、まさにそれはだんご大家族。しかも、俺達が集めた物に無い色違いの物で、それが沢山店に積まれて並んでいる。こうして見ると、少し怖さを感じてきたかも……。
「もしかして、二人共これが欲しいとか?」
「はい、欲しいです」
「うん、欲しい」
と、一秒立たずに返答が返ってきた。まあいつもの事だし、ここまで来たんだから、記念になるものとして買ってやるか。俺は二人が選んだぬいぐるみを持ちレジに向かった。
渚が選んだのは、これまで集めたきたものにはない赤と白の二色で分けられただんごで、汐の方は、カラフルに七色のだんごを選んだ。もちろん持ちやすいように大きな袋に入れてもらって。
「えへへっ、ありがとうございます。良かったですね、しおちゃん」
「うん、パパありがとう」
二人とも俺に笑顔を向けて喜んでくれた。ホント、こんな二人を見ていると来てよかったとそう感じる。
「なーに、いいってことよ。他のも見て回ろうぜ」
そう言って、俺は二人の手を取った。そうすると、二人とも嬉しそうにオレの手を握り返してくれた。
ふと時間を見てみると、もうすぐ昼になろうとする時間であった。
俺達は一旦、早苗さん達と待ち合わせしている、祭りの外にあるファミレスに向かった。
待ち合わせの場所までもう少しというところであった時だった。渚と話していて、つい前の方を見ていなかったために、俺は他の家族連れにぶつかってしまった。俺の不注意もあり、お互いに誤り、ホッとしていると、ふと右手の感触が違っていたのに気がついた。
「朋也くん、しおちゃんがいません……」
どうも、さっきぶつかった時に手が離れてしまったようだ。俺達はすぐ近くを見て回り探してみた。だが、流石にこの人込みの中を探すのはかなり大変だ。
「まずいな……」
この人の多さ。いくら汐でも、知らない所で一人になっては心細いはずだ。全く、自分の不注意でこんなことになるとは……。
自分の不甲斐なさに腹が立ちそうだ。
その後、走ってきた渚と合流して、俺は持ってきた携帯で早苗さん達に連絡を取った……。
ーー <> ーー
「ぐすっ……」
どうしよう、パパ達とはぐれちゃった……。そして急に不安になって、自然に目から涙がこみ上げてきた。ううっ……、泣かないもん、だって汐は強い子はだから。パパ達を見つけるまで泣かないと決めたもん。だけどそうは思っていても、なかなか涙が止まらないよ……。そのままフラフラと歩いていると、ーーードンーーー
「うっ」
「いたっ」
どうも、誰かにぶつかってしまったみたい。涙を拭いて顔をあげると、そこには、汐よりも一つ、二つぐらい年上の男の子がいた。
「オイ、どこ見てんだよ、って、なんだ、こいつ泣いているか。オイ、どうしたんだ?」
知らない男の子が話しかけてきた。……怖い。
「オレは皇 煉(すめらぎ れん)。お前は?」
「…汐。岡崎 汐」
男の子が名前を言ったので、こっちも名前も言った。
「ふーん、汐か。で、どうして泣いているんだ?どこか痛いのか?」
どうも汐のことを気にかけてくれてるようだ。悪い人ではなさそうな気がする。
「…あのね、パパ達と旅行に来たの。でも離れちゃって……ぐすっ」
パパとママのこと考えたらまた涙がぽろぽろ出てきた……。早く逢いたい……。
「お、おいおい……。こんなとこで泣くなよ。……う〜ん、仕方ないな。ヨシ、一緒に捜してやるよ。だから、泣くなよな」
煉くんが一緒に探してやると言ってくれた。汐を慰めてもくれたし、すごく嬉しかった。
「……うん」
それからは、二人でパパ達を捜してまわった。
祭りであるために、どこに行っても人ばかり。でも、汐の手を煉くんが引っ張ってくれて、とてもも安心できる気持ちであった。
途中でベンチを見つけ、少し休んでいる。途中、お店で買ったお菓子を二人で分け合って食べながら、少し話をする。
「へぇ〜、汐って結構から来てんだな」
煉くんはこの町に住んでいるらしく、どこで遊んでいるとか、好きなこととかを話してくれた。
「いいな。僕はここから遠くまで行ったことないからな。うらやましいよ、旅行とかに連れてってくれて」
「旅行したこと、ないの?」
汐が聞いてみると、煉くんは何故か悲しそうな顔をした。
「お父さんもお母さんも、仕事で忙しいからな……。でもいいんだ」
そういうと、汐に笑いながらこっちを向いた。その笑顔は、無理をして笑っているように思える。楽しいことを我慢している、そんな感じ。
「それはそうと、さっさと汐のパパとママを見つけないとな。ヨシ、向こうに行ってみるか」
汐の手を引っ張って、煉くんは走り出した。そして思った。この時には、さっきまでのパパとママに会えない淋しさもなく、ただ楽しいだけの気持ちであった……。
トラベル4に続く…
◆◇◆◇あとがき◇◆◇◆
……ホント、言葉もありませんm(_ _)m
放置みたいになっていましたが、何とか書けました。管理人さんからも、いつ殴られるのか、ビクビクしてましたが、それもなかったのがホント良かったです。オリキャラと汐目線みたいなのを初めて使いました。なんか、久し振りに書いたので、何書いているんだ?コイツ、と思われるかもしれないですが、寛大な心で読んで下さい。予定では、次で終わるかと思います(多分…)それでは、感想をお待ちしております。
2008年6月25日 初稿
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